美しい自然風景を撮影する際、多くの人は人間やその他障害物が映らないように配慮して構図を決めています。
私も風景を撮影する際は事前に頭の中にイメージを思い描いてから撮影することが多いので、その風景写真に人を入れることは滅多にありません。
しかし、そんな自然風景を愛するフォトグラファーの目線でポートレートを撮影するとどうなるのか。
ポートレートの撮影といえば、照明を用意したりスタジオを予約したりとなかなか大変なイメージも多いですよね。
今回は大掛かりなセットを使わずにカメラ一台で自然風景を活用したポートレートの例をご紹介します。
ロケ地は広大な大自然
今回ご紹介するロケ地は奈良県にある曽爾高原。
大阪からは車で約2時間、名古屋からは車で約2時間30分で到着します。
曽爾高原は倶留尊山のふもとに広がる広大な高原で、夏は綺麗な緑で覆われ、秋になると黄金に輝くススキに包まれます。
黄金のススキが一面を覆う姿はまるで『風の谷のナウシカ』のような世界観です。
重要|撮影許可について
曽爾高原でポートレート撮影を行う際は、事前に曽爾村観光協会への申請が必要となります。
以下のホームページの問い合わせフォームから許可申請をしましょう。
私が申請した時は、メールが返ってきて必要事項をいくつか聞かれたので回答しました。
(車の大きさ、持ち込み機材、当日同行する人数など)
土日祝は担当者の方がお休みの可能性があるので、なるべく早めの平日に問い合わせをすることをオススメします。
ロケ地を選んだポイント
自然風景を活かしたポートレートを撮影する場合に注意したロケ地選びのポイントをご紹介しまます。
①広大な土地
まず選びたい基準は広大な土地であること。
狭い場所だと他の観光客の方が映り込んでしまう可能性が高くなり、思ったように撮影が進まずテンポが悪くなってしまいます。
自然風景の撮影は時間との戦いです。撮影許可をいただいているとはいえ、他の観光客の方々の邪魔になるようなことになってはいけません。速やかに撮影を進めるためにも、なるべく人が少ないポイントを選択できる余力がある場所の方がスムーズに撮影できます。
②背景に使える要素
今回選定した曽爾高原には背の高いススキが至る所に生えています。特に秋口になると金色に輝くススキがエレガントな雰囲気を演出してくれるのでおすすめです。
自然の中での何気ない一枚を撮ることもできる上、背景として使用することで絵画のような仕上がりにすることもできます。
③時間帯は早朝
普段から風景写真がメインでポートレートをやったことがないという人にとっては、ストロボなどの照明器具を扱うのは難しいでしょう。そのため、光が十分にある時間帯を選ぶことで普段の風景写真の撮影と同じ要領で撮影することができます。
特にF値の暗いレンズを使用している場合は夕方だと撮りづらいですよね。三脚を使って撮影しようと思っても、被写体となる人が完全に静止できなければブレてしまいます。
もちろん人間なので、完全に硬直するのは難しいでしょう。
時間帯の変化で光の強さや空気の柔らかさが変化してしまうので、狙った写真を撮るためにまずは早朝の空気が澄んでいて明るい環境がおすすめです。
F値の明るいレンズで暗い中でも手持ち撮影できるようなら夕方に訪れても良い写真が撮れるでしょう。
風景写真目線で撮るポートレート実践編
それではここからは実際に風景写真を撮る目線で撮影したポートレートの作例を見ていきましょう。
Case1.背景の華やかさとの調和
【使用機材】
カメラ:Nikon Z7(Amazonリンク)
レンズ:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED(Amazonリンク)
【設定】
f/5.6|1/200秒|ISO 100|45mm
【撮影日時/天候】
2019/10/13 8:30 曇り
被写体が占める割合を抑え、背景の壮大さと華やかさを演出しています。
ススキの色に合わせるため服装もアースカラーを選択。全体的に色味もベージュとグリーンで統一することでエレガントな仕上がりになっています。
Case2.道の奥行きを活かした視線誘導
【使用機材】
カメラ:Nikon Z7(Amazonリンク)
レンズ:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED(Amazonリンク)
【設定】
f/4.0|1/200秒|ISO 80|45mm
【撮影日時/天候】
2019/10/13 8:00 曇り
曽爾高原は全体的に自然豊かで畦道を沿うようにして木で作られた柵と灯りが続いています。
その両橋にはススキが生い茂り、ずっと奥へ続いていきます。
その道の途中に被写体を配置することで写真にストーリーが生まれます。
【使用機材】
カメラ:Nikon Z7(Amazonリンク)
レンズ:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED(Amazonリンク)
【設定】
f/4.0|1/200秒|ISO 80|45mm
【撮影日時/天候】
2019/10/13 8:00 曇り
この写真で使用しているレンズ「PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED」はティルトシフトレンズという特殊レンズで、ピントの軸をズラすことで意図的にピント位置を変化させることができます。
また写真の歪みを補正することができ、一般的には建築物の撮影に用いられます。
自然風景で使用すること自体が珍しいのですが、今回はあえてもっと特殊なポートレートでの導入を試してみました。
被写体にだけピントを合わせてその他全てにボカしを入れるという通常のレンズではできない撮影方法によって、異世界観を出してみました。
Case3.望遠レンズを使用したカット
【使用機材】
カメラ:Nikon Z7(Amazonリンク)
レンズ:AI AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-ED(Amazonリンク)
【設定】
f/5.6|1/200秒|ISO 100|200mm
【撮影日時/天候】
2019/10/13 8:20 曇り
手前の道をボケさせて視線から外すことで被写体(=写真左側)に視線を集め、その被写体は逆に左(=写真右側)をまっすぐに向くことで視線誘導を促す構図です。
ドラマやアニメのシーンでもよく見かける構図ですね。
この写真ではあえてススキをカットし、背景の柵をアクセントに使いました。
ポートレートにおける望遠レンズは背景をボケさせる用途で使用することが多いですが、今回は背景と調和させるのが目的なのでf/5.6まで絞り、ボケすぎずボケなさすぎないラインを狙いました。
Case4.体の一部のみを切り取って広告っぽくする
【使用機材】
カメラ:Nikon Z7(Amazonリンク)
レンズ:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED(Amazonリンク)
【設定】
f/5.6|1/200秒|ISO 125|45mm
【撮影日時/天候】
2019/10/13 8:00 曇り
体の一部のみを切り取ると、広告っぽい写真に仕上がります。
左側にキャッチコピーが入ってきそうですよね。
さっきまでの写真はプロフィール写真に向いていますが、体の一部だけを切り取ったこちらの写真はSNSのヘッダー部分などにぴったりマッチします。
ヘッダー部分は言わば自分のキャラクターを訴求するための広告スペースです。プロフィールにも顔を写してヘッダーにも顔を写すとしつこい感じを受けてしまいますが、体の一部だけを使って広告っぽくするとむしろお洒落に仕上がって好印象です。
風景写真目線でのポートレートにおは自然の力をナチュラルに活かす演出が必要
自然風景を上手く活かしたポートレートを撮るためには、現地の地形や自然の特徴をナチュラルに活かす演出が必要になります。
ただ単に自然の中で写真を撮るだけではただの記念撮影になってしまうこともあるからです。
今回の写真はススキの上品さと曇りという絶妙な天候を活かして、少しシックでエレガントな雰囲気を意識して撮影しています。
また、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回撮影した写真は全てF値4以上で設定しています。
ポートレートではF値1.8〜2.8を使ってボケさせることにこだわるケースが多いですが、自然風景を活かすという観点で考えればむしろボカしすぎはNGとなります。
その分光の量が足りなくなってしまうので、早朝からの撮影がおすすめなのです。
設定上、開放F値が4以上でもこれだけの撮影は可能ですので、みなさんも自然風景でのポートレートに挑戦してみてはいかがでしょうか。
参考商品
カメラ:Nikon Z7(Amazonリンク)
レンズ①:PC-E Micro NIKKOR 45mm f/2.8D ED(Amazonリンク)
レンズ②:AI AF Micro-Nikkor 200mm f/4D IF-ED(Amazonリンク)
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